不貞をした配偶者からの婚費請求につき判断した大阪高決平成28.3.17決定

 婚姻中、相手方が婚姻費用を支払ってくれない場合、婚姻費用分担を求めることができますが、婚姻関係の破綻もしくは別居について専らまたは主として責任がある者の分担請求については、信義則あるいは権利濫用の見地から許されない、あるいは減額されるとする裁判例が大勢となっているようです。

 この点、大阪高裁平成28年3月17日決定が判断していますのでご紹介します。

大阪高裁平成28年3月17日決定

事案の概要

① 夫(Y)と妻(X)は平成10年に婚姻し、長女、二女および長男が出生した。

② Yは平成27年に単身で家を出て別居となり、Xは家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てたが、同調停は不成立となり、審判手続に移行した。

③ Yは、別居に至った原因は、専らXの不貞によるものであって、Xによる婚姻費用分担請求は権利濫用に当たると主張したが、原審が不貞関係を認めず、婚姻費用分担を命じたため、Yは抗告した。

高裁決定の内容

 高裁は次のように述べて、子らの養育費相当分に限って認められるとした。

「2 婚姻費用分担義務の存否について

 夫婦は、互いに生活保持義務としての婚姻費用分担義務を負う。この義務は、夫婦が別居しあるいは婚姻関係が破綻している場合にも影響を受けるものではないが、別居ないし破綻について専ら又は主として責任がある配偶者の婚姻費用分担請求は、信義則あるいは権利濫用の見地からして、子の生活費に関わる部分(養育費)に限って認められると解するのが相当である。」

コメント

 夫婦が別居していていても婚姻費用分担義務を負っていますが、上記裁判例のとおり、「別居に至った原因が、専ら又は主として権利者のみに存する場合」には、その請求は制限されるのが一般的です。

 ただし、未成熟子の養育費相当額については、親の子に対する扶養義務がありますので、認められます。子が成人に達していても、大学生等であれば未成熟子として養育費相当額が認められる可能性もあります。

(弁護士 井上元)