子供が面会交流を嫌がった場合の間接強制

 離婚した後、未成年の子がいる場合、非監護親は監護親に対し、未成年の子との面会交流を求めることができ、両者間で話し合いがつかない場合、調停もしくは審判で、特に子の福祉に反しない限り、面会交流が認められることになります。

 そして、監護親が、上記調停もしくは審判に従わず、子と非監護親との面会交流を実行しなかった場合、調停もしくは審判が強制執行可能な内容になっておれば、非監護親は間接強制(監護親が履行しないとき一定額の支払いを命じること)を求めることができます。

 ところが、子が、非監護親との面会交流を嫌がった場合はどうなるのでしょうか?

 この点、大阪家裁平成28年2月1日決定が判断していますのでご紹介します。

大阪家裁平成28年2月1日決定

事案の内容

① 家庭裁判所は、非監護親(父)と監護親(母)に対し、両名の間の未成年の子Cと非監護親の面会交流を実施することを命じる審判をし、同審判は確定した。

② 審判手続に先立つ調停手続において、非監護親とCとの試行的面会交流が家庭裁判所で実施されたが、Cは楽しそうに問題なく非監護親と面会交流を行っていた。また、家庭裁判所調査官は、Cと面接したうえで、父子関係に問題はなく、当事者双方が定期的で円滑な面会交流を実施することの意義を理解し、早期に面会交流を実施することが望ましい旨記載した調査報告書を提出している。

③ 上記審判が確定したことにより、非監護親とCとの面会交流が実施されることになり、Cと同居している監護親において、Cを上記審判で定められた引渡場所に行くために、Cを連れて自宅を出ようとしたが、非監護親と会うことを教えられたCが自宅を出るのを嫌がったために、Cを引渡場所に連れて行くことができなかった。

④ 非監護親は、面会交流が実現しなかったことから、面会交流の間接強制の申立てをした。

決定の内容

 次のように述べて、監護親に対し、面会交流審判とおりの面会交流を実施するよう命じるとともに、その義務を履行しないとき、不履行1回につき4万円の支払いを命じた。

「債務者は、前件審判により、毎月第○及び第○の○曜日の○○時の面会交流開始時に、○○で未成年者を債権者に引き渡す義務を負っているところ、債務者は、面会交流が予定されていた平成27年○○月○日及び○○日に未成年者を○○に連れて行かず、前記義務を履行しなかった。

 この点について、債務者は、面会交流の実現のために誠実に対応しているが、現実に未成年者を○○まで連れていくことさえ困難な状況にある旨主張する。確かに、債務者は、同月○日及び○○日に未成年者を連れて行こうとしたが、未成年者が嫌がったことは、前記認定のとおりである。

 しかし、約2年前にはなるが、平成26年○月○○日に実施された債権者と未成年者との試行的面会交流において、未成年者は楽しそうに問題なく債権者と面会交流ができており、約1年前の平成27年○月○○日に家庭裁判所調査官が未成年者と面接したうえで、早期に面会交流を実施することが望ましいとする調査報告書を提出していることからすると、未成年者を監護する親としては、現在7歳である未成年者に対し適切な指導、助言をすることによって、未成年者の福祉を害することなく義務を履行することが可能であると考えることができる。しかるに、同年○○月以降、債権者と未成年者との面会交流が実現できていないことに照らすと、今後債務者の義務が履行されないおそれがあるということができる(なお、現在の未成年者の状況等から前件審判で定められた面会交流の方法が適切でない場合には、債務者において申立てを予定している面会交流の調停事件等の手続において、より適切な方法を検討すべきである。)。」

コメント

 面会交流を認める審判がなされた後、子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示している場合につき、東京高裁平成23年3月23日決定や大阪高裁平成24年3月29日決定は、面会交流の間接強制の申立てを却下しています。

コラム「面会交流の間接強制の申立てを却下した大阪高裁平成24年3月29日決定」参照

 しかし、最高裁平成25年3月28日決定(平成24年(許)第48号)は次のとおり判断しています。

「子の面会交流に係る審判は、子の心情等を踏まえた上でされているといえる。したがって、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判がされた場合、子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは、これをもって、上記審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し、又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別、上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。」

 上記大阪家裁平成28年2月1日決定は同最高裁決定に従い、間接強制を命じ、「なお、現在の未成年者の状況等から前件審判で定められた面会交流の方法が適切でない場合には、債務者において申立てを予定している面会交流の調停事件等の手続において、より適切な方法を検討すべきである。」としているのです。

 今後、子が非監護親との面会交流を拒否している場合、監護親としては、新たに面会交流に関する調停を申し立てることも検討する必要がありそうです。

(弁護士 井上元)