監護親の非監護親に対する面会交流の要求

 面会交流は、非監護親が監護親に対し、未成年の子との面会交流を求めるのが通常です。それでは、監護親が非監護親に対して未成年の子との面会交流を行うよう求めることはできるのでしょうか?

 この点につき東京高裁平成28年5月17日決定が判断していますのでご紹介します。

東京高裁平成28年5月17日決定

事案の概要

①妻が、家を出て別居中の夫に対し、妻が監護する夫との間の子である未成年者との面会交流をすることを求める旨の申立てをした。

②原審が本件申立てを却下する旨の審判をしたため、妻はこれを不服として即時抗告をした。

高裁決定

 東京高裁は次のように述べて原審判を取消し、家庭裁判所に差し戻しました。

「未成年者と非監護親との面会交流が、未成年者の健全な成長と発達にとって非常に重要であることはいうまでもなく、未成年者は、別居当時には生後10か月で、現在1歳7か月になったばかりの乳児期にあって、母親である妻の身上監護を受けているとはいえ、できるだけ速やかに父親である夫との定期的な面会交流の実施が望まれるところである。妻と夫との間には、離婚をめぐって厳しい対立関係にある様子がうかがわれ、夫において、未成年者との面会交流の実施につき、妻が離婚交渉に応ずることを条件とするようであるが、そもそも面会交流は、上記のとおり未成年者の健全な成長と発達にとって非常に重要であり、その未成年者の利益を最も優先して考慮して実施すべきものであるから、監護親及び非監護親は、その実施に向けて互いに協力すべきものであって、本件においては、監護親である妻が面会交流の実施を強く望んでいることは上記のとおりであり、一件記録によれば、非監護親である夫も未成年者との面会交流自体には必ずしも否定的な姿勢ではなく、第三者機関を利用した方法による実現の可能性も考えられるところである。そうすると、なお、当事者に対する意向調査等を通じて、面会交流の趣旨の理解とその実施への協力が得られるように働き掛けを行うなど、面会交流の実施に向けての合意形成を目指して両当事者間の調整を試み、これらの調査や調整の結果を踏まえた上で、最終的に面会交流の実施の当否やその条件等を判断する必要があるというべきである。

 したがって、本件については、原審において、更に審理をする必要があると認められるので、原審に差し戻した上、改めて面会交流の実施に向けた調整等をし、その結果を踏まえて判断することが相当であるといわなければならない。」

コメント

 本件は、非監護親が監護親に対し、未成年の子との面会交流を求めた極めて稀な事案です。裁判所が妻の申立てを認める場合、どのような主文になるのか、そもそも夫に子と面会交流を行うべき法律上の義務があるのかなど、検討すべき課題がありそうです。