別居期間約2年で婚姻関係破綻を否定した東京高判平成25.4.25

 約2年間の別居があったものの、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い事由」を認めなかった東京高裁平成25年4月25日判決をご紹介します。

東京高裁平成25年4月25日判決

事案の概要

① 妻と夫は、平成10年10月に婚姻した。

② 妻は、平成23年2月ころ、同居していたマンションを出て実家に戻り、以後、妻と夫は別居状態である。

③ 妻は、平成23年3月、家庭裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てたが、同年9月、不成立により終了したため、夫の不貞行為及び婚姻を継続し難い重大な事由を主張して離婚を求める訴訟を提起した。

原審(水戸家裁土浦支部判平成24.12.21)

 家裁は、夫の不貞を否定するとともに、「婚姻を継続し難い重大な事由」につき次のように述べて妻の離婚請求を棄却しました。

「1年8か月という別居期間を過大に評価するのは相当ではなく、妻が離婚訴訟を提起し、現時点においても強く離婚を望んでいることを考慮しても、一般的、客観的に、婚姻関係が深刻に破綻し、およそ回復の見込みがないとまで認めるのは困難である。したがって、妻と夫との婚姻関係には、婚姻を継続し難い重大な事由があると認めることはできない。」

高裁判決

 高裁も、家裁とほぼ同様に述べて妻の控訴を棄却しました。

「婚姻関係破綻について

ア 妻は、夫との間で信頼を築き、維持していくことができないとの結論に至り、平成27年2月○日、夫に対し、離婚の意思を伝え実家に戻り、以降、別居状態が続いており、妻と夫との婚姻生活は破綻しているから、婚姻関係を継続し難い重大な事由があると主張する。

イ 妻が主張する不貞行為及び婚姻関係を継続し難い重大な事由に対する前記○○の認定判断を踏まえて、妻の主張や尋問結果~等を検討すると、妻は、平成12年ころに、夫が特定の女性とチャットをしたり、その女性に会いに行ったことなどから、夫に対し不信感を抱くようになり、また、共働きの生活の中で家事の負担や、生活費の負担割合、持ち家を買うかどうかといった将来設計や金銭感覚のずれなどに対する不満を徐々に募らせていき、次第に夫への愛情、関心が薄れていたところに、本件暴行が重なり、離婚意思を固めたものと推認することができる。

ウ もっとも、前記○○によれば、妻と夫とは、長期間にわたり、少なくとも表面上は概ね穏やかな婚姻生活を継続していたということができ、被告父が入院し、本件暴行が行われた後も、一緒に被告父を見舞ったり、妻の実家を訪れるなどしており(前記○○参照)、妻が平成23年2月○日に夫に対して実家に戻る旨を告げる(前記○○参照)まで、婚姻関係の破綻を窺わせるような事情は認められない。

 妻は、日頃の不満や、離婚したいということを夫に伝えなかったことについて、夫の気持ちに沿って生活していれば衝突しないで暮らしていけた、仮に話しても物に当たったりされて対抗する気持ちがなくなると思った、いつか誰の目から見ても離婚した方がいいというような事態が起きるのではないかと淡い期待をしていた等と述べていること(原審における妻本人○○)も斟酌すれば、少なくとも本件暴行が行われるまでは、妻は、女性問題や生活面、金銭面等妻が種々主張する事由につき漠然と不満を感じながらも、積極的に離婚するまでの意思はなく、それらを理由として婚姻関係に重大な問題が生じていたとまでは認め難い。

 そうすると、女性問題や本件暴行等、夫に問題がなかったとはいえないが、別居については、性格や価値観の相違が大きな要因となっているというべきであり、妻において離婚を求めるのが当然であるとか、およそ修復が期待し得ないような重大な問題、衝突があったとはいえない。

エ 加えて、妻からの別居の申出は、唐突なものであって(前記○参照)、夫婦関係を改善するべく双方が相応の努力を重ねたにもかかわらず、問題が解消されず、客観的に婚姻関係に深刻な亀裂が生じた状態となり、別居に至った等の経緯もない。

オ 一方、夫は、婚姻関係の継続を強く望んでおり、本件訴訟を通じて明らかになった問題点の改善を誓っている。

カ 上記の事情に照らせば、別居後約2年を経過していること、妻が離婚訴訟を提起し、強く離婚を望んでいることを考慮しても、婚姻関係が深刻に破綻し、およそ回復の見込みがないとまで認めるのは困難である。

 したがって、妻と夫との婚姻関係が破綻しているということはできず、婚姻を継続し難い重大な事由があると認めることはできない。」

コメント

 本件では、別居期間約2年間に加え、夫の女性問題(不貞は否定されましたが、夫の女性とチャットは認めています)、夫による妻の親族に対する暴行等がありましたが、家裁、高裁とも、夫婦関係の修復は可能だとして妻からの離婚請求を棄却しました。

 本件の家裁や高裁の裁判官は、妻にどうしろと言うのでしょうか。同居を再開して決定的に破綻するまで我慢しろというのでしょうか。あるいは、無意味な別居状態をこのまま続けろと言うのでしょうか。

 上記判決は疑問ですが、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い事由」については、担当裁判官の価値観が大きく反映されることに注意が必要です。

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(弁護士 井上元)