面会交流につき間接交流を認めるにとどめた東京高裁平成27年6月12日決定

 面会交流につき、直接交流を認めず、限定的な間接交流を認めるに止めた、東京高裁平成27年6月12日決定について、ご紹介します。

事案の概要

申立ての経緯について

 夫婦は、平成19年5月に婚姻し、両名の間に、同年10月に長男、平成22年2月に二男(以下「子ら」という)が生まれた。

 夫婦は、同居中、口論になることが多かったが、夫は、妻との口論の際に、立腹して、ガラスのコップを割る、掛け時計を素手で殴打して壊す、コードレス電話の子機を床に投げつけて壊す、携帯電話を壁に投げつけて壊すなど、物に当たることがあり、長男が割れたコップの破片で怪我をしたこともあった。妻は、次第に夫に言い返さなくなり、夫は、妻を激しく責め、子らの前で罵倒することもあった。

 夫は、平成23年8月、妻に対し、約1週間の安静及び経過観察見込みの右大腿打撲の怪我を負わせた。妻は、その翌日、警察に相談し、子らを連れて家を出て実家に戻り、それ以降、夫婦は別居している。別居当時、長男は3歳、二男は1歳5か月であった。

 平成23年、妻は、離婚等を求める調停等を申し立てた後、保護命令を申し立てた。保護命令の申立てを受けた裁判所は、夫に対し、妻及びその両親に対する接近禁止等を命じる保護命令を発令した。

他方、夫は、子らとの面会交流を求める調停を申し立てたが、不成立となり、本件審判へ移行した。

子らの心身の状況等について

 家庭裁判所調査官は、調査報告書において、子らの発育は順調で、面会交流を控えなければならないような子ら側の事情は認められないものの、妻に対する夫の暴力的な言動や夫婦の対立の深刻さに鑑み、夫婦間での面会交流の調整は極めて困難であり、第三者機関による支援の体勢が整うかは今後の課題である旨の意見を述べた。

子らを診察した医師は、意見書において、長男について情動不安定状態(心因反応)、二男について不安状態(心因反応)と診断し、その原因として、子の心が健康に育つために必要な安心して自由に生活できる保護環境、及び妻の精神的安定が、夫の言動により保障されなかったことを挙げ、夫との面会は控えることが望ましい旨の意見を述べた。子らは現在も通院しており、長男は継続して投薬治療を受けている。

 妻を診察した医師は、意見書等において、妻が同居中の夫のDVを原因とする心的外傷後ストレス障害を発症し、夫のDVや暴言等を想起させる裁判の継続が原因となり、通院治療が継続している旨の意見を述べた。

決定の概要

主文の概要

妻は、本決定確定後、2か月に1回、夫が子ら宛てに送付した子らへの手紙を速やかに子らに渡さなければならない。

妻は、夫に対し、本決定確定後、4か月に1回、長男の近況を撮影した写真を送付しなければならない。

妻は、夫に対し、本決定確定後、4か月に1回、二男の近況を撮影した写真を送付しなければならない。

理由の概要

 面会交流は、子の福祉の観点から決せられるべきであり、子の福祉に反すると認められる特別の事情のある場合には、認められるべきではない。共同親権者であるからといって、子の福祉の観点から子との面会交流が制限されることがないということはできない。

 本件では、妻が同居期間中に夫から受けた暴力及び暴言、別居後の長年にわたる裁判等のストレスにより、心的外傷後ストレス障害との診断を受け、現在も通院を続けている。長男は、夫の暴力や暴言等による不安の記憶や上記の妻の様子を間近で見ることなどにより、二男は、上記の妻の様子を間近で見ることなどにより、それぞれ心因反応を発症したと推認される。このような妻と子らの状況を踏まえると、妻の負担を増大させてまで直接交流を認めることは、かえって子らの夫に対するイメージを悪化させる可能性があるため、相当ではない。

 そして、間接交流は直接交流につなげるためのものであるから、できる限り双方向の交流が行われることが望ましいが、妻の負担を増大させることで、子らに悪影響を及ぼすような事態を生じさせることは避けなければならない。

 したがって、主文のとおり決定する。

説明

面会交流の意義

 面会交流とは、離婚後又は別居中に子を養育監護していない親(非監護親)が、その子と会ったり、電話や文通をしたりすることをいいます。

 明文上の根拠はありませんが、面会交流をすることは、親として有する固有の権利であり、心身の健やかな成長に不可欠な親との交流を求める子の権利としての性格も有します。

 面会交流については、「子の利益」(民法766条1項参照)を最も優先して考慮しなければならず、面会交流の可否の判断の際には、子の心身の状況・監護状況、子の意思・年齢、監護教育に及ぼす影響、父母の意思・心身の状況、父母の葛藤・緊張関係の程度や面会交流についての父母の協力の可能性等が考慮されます。その上で、子の福祉に反すると認められる特段の事情がない限り、家庭裁判所は面会交流を認める傾向にあります。

面会交流を求める場合の手続

 面会交流は、子の「監護について必要な事項」(民法766条1項)であり、父母の協議が調わないときは、家庭裁判所に対し、面会交流に関する調停又は審判を申し立てることができます(家事事件手続法39条・別表2第3項)。調停等で離婚が成立せず、裁判になったときは、離婚請求の附帯処分として、面会交流の申立てをすることもできます(人事訴訟法32条)。

間接交流の意義

 直接交流とは、実際に子と非監護親が会って交流する方法をいいます。これに対し、間接交流とは、直接交流に代わる、手紙、ビデオや写真の送付等による交流をいいます。

 監護親に対するDVや子に対する虐待等があり、親としての不適格性が顕著な場合には、間接交流すら子の心身の健やかな成長を脅かしかねません。この場合、子の福祉に反すると認められる特段の事情があるものとして、面会交流自体を認めるべきではありません。

しかし、そうでない場合には、現時点で父母の葛藤等から直接交流が不可能であっても、可能な限り、直接交流に代わる何らかの親子の交流を保障し、将来の直接交流に発展させる基盤づくりをしておくことが、子の福祉にとって有用です。間接交流の意義は、現時点で直接交流を認めることが子の福祉に反すると認められる特段の事情がある場合に、子の福祉の観点から、これに代わる交流を認め、将来の直接交流へつなげる点にあります。

本件について

 本件では、家庭裁判所は、子らや監護親である妻の心身の状況等を考慮し、面会交流への協力で妻の負担を増大させることが妻と同居する子らへ悪影響を及ぼしうると判断し、直接交流を認めることが子の福祉に反すると認められる特段の事情があるものとして、限定的な間接交流のみを認めました。