同性婚と内縁関係(事実婚)につき判断した宇都宮地裁真岡支判令和元・9・18

 「同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか否か」につき、宇都宮地裁真岡支判令和元年9月18日判決が注目すべき判断をしていますのでご紹介します。

宇都宮地裁真岡支部令和元年9月18日判決

事実関係

⑴ 原告(女性)と被告A(女性)は、平成26年、アメリカ合衆国ニユーヨーク州において同州法に基づく婚姻として婚姻登録証明書を取得し、平成27年には日本において結婚式を挙げ、披露宴も開催した。

⑵ 原告は、被告Aが被告Bと不貞行為を行い、その結果、原告と被告Aの同性の事実婚(内縁関係)が破綻したとして、共同不法行為に基づき、婚姻関係の解消に伴う費用等相当額及び慰謝料の損害賠償請求をした。

判決

 幾つかの点が争われていますが、本件では、「同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか否か」について次のように判示し、被告Aに対する慰謝料100万円及び弁護士費用10万円を認めました。

同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか否か

内縁関係は婚姻関係に準じるものとして保護されるべき生活関係に当たると解される(最高裁判所昭和33年4月11日判決・民集12巻5号789頁参照)ところ、現在の我が国においては、法律上男女間での婚姻しか認められていないことから、これまでの判例・学説上も、内縁関係は当然に男女間を前提とするものと解されてきたところである。

 しかしながら、近時、価値観や生活形態が多様化し、婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。世界的に見ても、同性のカップル間の婚姻を法律上も認める制度を採用する国が存在するし、法律上の婚姻までは認めないとしても、同性のカップル間の関係を公的に認証する制度を採用する国もかなりの数に上っていること、日本国内においても、このような制度を採用する地方自治体が現れてきていることは、公知の事実でもある。かかる社会情勢を踏まえると、同性のカップルであっても、その実態に応じて、一定の法的保護を与える必要性は高いということができる(婚姻届を提出することができるのに自らの意思により提出していない事実婚の場合と比べて、法律上婚姻届を提出したくても法律上それができない同性婚の場合に、およそ一切の法的保護を否定することについて合理的な理由は見いだし難い。)。また、憲法24条1項が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」としているのも、憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず、およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されないから、前記のとおり解することが憲法に反するとも認められない。

 そうすると、法律上同性婚を認めるか否かは別論、同性のカップルであっても、その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ、不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である(なお、現行法上、婚姻が男女間に限られていることからすると、婚姻関係に準じる内縁関係(事実婚)自体は、少なくとも現時点においては、飽くまで男女間の関係に限られると解するのが相当であり、同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないというべきである。)。

コメント

 本件は、「同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか否か」につき注目すべき判断をした判決です。

 内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められるとしましたが、「現行法上、婚姻が男女間に限られていることからすると、婚姻関係に準じる内縁関係(事実婚)自体は、少なくとも現時点においては、飽くまで男女間の関係に限られると解するのが相当であり、同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないというべきである。」とも判示しています。

(弁護士 井上元)