離婚した場合、子の氏や戸籍はどうなるか?

 両親が離婚した場合、子の氏や戸籍はどうなるのでしょうか。

1 離婚後の妻の氏及び戸籍について

 婚姻によって氏を改めた妻は、離婚によって、何らの手続を要せずに、法律上当然に婚姻直前の氏に復し(民法767条1項、771条・767条1項)、夫婦の戸籍から除籍され、原則として、婚姻前の戸籍(例えば、親の戸籍)に入籍することとなります(戸籍法19条1項本文、23条前段)。その結果、いわゆる「旧姓」に戻ります(復氏)。

 ただし、復氏した妻が、新戸籍編製の申出をしたときは、妻を戸籍筆頭者とする新戸籍が編製されます(戸籍法19条1項ただし書)。

 離婚の日から3か月以内に、「離婚の際に称していた氏を称する届出」(いわゆる婚氏続称の届出/戸籍法77条の2)をした場合には、離婚の際に称していた氏を使用することができます(民法767条2項・771条)。この場合、妻の戸籍は、所定の手続を経て、夫を戸籍筆頭者とする戸籍とは別の、妻を戸籍筆頭者とする戸籍となります(戸籍法19条1項本文、同条3項、昭和62年10月1日民二5000号民事局長通達第4の1参照)。

2 離婚後の子の氏及び戸籍について

 両親が離婚しても、子の氏及び戸籍は変更されないため、子は、未だ離婚した夫を戸籍筆頭者とする戸籍に入ったままとまります。

 離婚した妻が復氏した場合も、婚氏を続称した場合も、所定の手続を経なければ、子は妻の戸籍に入ることはできません。妻が離婚の際に子の親権者となったとしても、所定の手続を経なければ、子を自分の戸籍に入れることができず(戸籍法18条2項)、夫を戸籍筆頭者とする戸籍上に、子の親権者が妻である旨の記載がなされるにすぎないのです。

 そこで、離婚した妻が子を自分の戸籍に入れたい場合には、子の氏の変更許可申立て(民法791条1項、同条3項、家事事件手続法39条・別表1第60項)をし、家庭裁判所の許可審判を得る必要が生じます。審判手続では、子の氏の変更が子の福祉にかなうものか否かという観点から審理されます。

3 子の氏の変更許可申立ての手続について

 子が15歳未満である場合(民法791条3項)、子本人ではなく、子の法定代理人(例えば、子の親権者である妻)が、子の住所地を管轄する家庭裁判所に、申し立てることとなります。子が15歳以上である場合は、子本人が、家庭裁判所に申し立てることとなります。

4 許可審判後の戸籍の届出手続について

 家庭裁判所の許可審判を得ても、直ちに氏が変わるのではなく、入籍届をしなければ子の氏は変更されません。

 届出人(入籍届に必要事項を記入し署名押印すべき人)は、子が15歳未満である場合には子の法定代理人(例えば、子の親権者である妻)であり、子が15歳以上である場合には子本人です(民法791条1項~3項、戸籍法98条)。

 届出人は、子の本籍地又は届出人の所在地(住所地又は一時滞在地)の市区町村役場に、審判書謄本等を添付した入籍届を提出しなければなりません。

 届出をした場合、子は離婚した妻の戸籍に入籍することとなります(東京弁護士会法友全期会家族法研究会『離婚・離縁事件実務マニュアル(第3版)』217頁~228頁(ぎょうせい)参照)。

5 呼称上の氏と民法上の氏の違いについて

 上記2で述べたように、離婚した妻が復氏した場合も、婚氏を続称した場合も、所定の手続を経なければ、子は妻の戸籍に入ることはできません。これは、両親が離婚しても子の氏及び戸籍は変更されないため、離婚によって子の「氏」が妻の「氏」と異なることによります。妻は、子に自分と同じ「氏」を称させなければ、子を自分の戸籍に入れることができないのです(戸籍法18条2項)。

 ここでいう「氏」は、呼称上の氏ではなく、民法上の氏を意味します。

 氏は、民法上、出生によって定まり、その後、婚姻、離婚等により変動します。これを民法上の氏といいます。これに対し、民法上の氏の変動はありませんが、その呼称(戸籍の氏名欄の氏の記載)を変える必要がある場合に、一定の要件と手続の下で、その変更が認められ、これを呼称上の氏の変更といいます(判例タイムズ1419号177頁、178頁参照)。