外国の裁判離婚による共同親権を単独親権に変更した東京家審令和元.12.6

日本では、婚姻関係にある夫婦の間の子は父母の共同親権に服しますが(民法818条)、夫婦が離婚した場合、子の親権は、いずれか片方の親の単独親権となります(民法819条1項、2項)。

しかし、外国では、離婚後も、共同親権となる国もあり、外国人と日本人が外国で離婚した場合、子は共同親権に服することもあります。

このような事案において、外国法上の共同親権を単独親権に変更した裁判例があります。めずらしい事案ですのでご紹介します。

東京家裁令和元年12月6日審判・判例時報2456号123頁

事案の概要

  1. X女(日本国籍)とY男(A国籍)が婚姻し、長女及び二女(子ら)が出生した。
  2. X女とY男は、子らの親権を共同親権として離婚手続を開始することを合意し、A国の裁判所において離婚の裁判が登録され、離婚が成立した。
  3. X女は子らを連れて日本に帰国し、以後、日本で子らを監護しているが、その監護に問題はみられない。
  4. Y男は、X女らの帰国後すぐにX女と1回電話で話した以降音信普通となり、子らに会うことも、養育費の支払いもしていない。
  5. X女はZ男と交際を開始し、婚姻を予定して、Z男はX女および子らと同居している。
  6. X女は、Z男との婚姻に当たって、Z男と子らが養子縁組することを希望しているが、子らの親権が共同親権となっていることから、養子縁組を代諾することができない。
  7. 子らは、現在の生活を肯定的に受け止めており、X女が親権者となることについて反対していない。

判断

次のように述べて、子らの親権者を共同親権から単独親権に変更しました。

国際裁判管轄について

本件において、Y男は、A国籍を有するものであることから、国際裁判管轄について検討すると、子らの住所が日本国内にあることから、家事事件手続法3条の8により、我が国の裁判所に国際裁判管轄が認められる。

準拠法について

本件において、子らの母国法が母であるX女の本国法で同一であるから、子らの本国法である日本法によるべきである(法の適用に関する通則法32条)。

共同親権の定めの有効性とその変更について

「子らの親権をX女とY男が共同して有することを内容とするA国における離婚は、民事訴訟法118条の要件を満たし、我が国においても効力を有するものといえる。」

「外国において子の親権を父母の共同親権とする定めが我が国において有効とされる場合において、国際裁判管轄を有する日本の裁判所は、日本法が準拠法とされるときは、民法819条6項に基づき、父母の共同親権から父母の一方の単独親権とすることができると解される。」

「X女は、Y男との離婚以降、6年以上にわたって子らの監護をしており、その監護状況について問題は認められない。他方、Y男は、離婚以来、具体的に子らの親権を行使したり、監護を担ったりしたことはなく、子らとの交流もしていない。このことに加え、X女がZ男との婚姻に当って、子らとZ男との養子縁組を望んでいるところ、子らが既にZ男と同居しており、Z男と養子縁組することが、生活環境の安定にも資することになり、子らの利益となるといえることに照らすと、子らの親権をX女とY男の共同親権からX女の単独親権へと変更することが子らの利益のために必要であるといえる。

(弁護士 井上元)