親権者変更を認めた東京家裁平成26年2月12日審判

親権者変更の規定

 夫婦が離婚する際、未成年の子がいる場合には必ず、どちらか一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。

 しかし、その後、当該親権者による子の監護状況が変化するなど、親権者を変更した方が子も福祉に適う状況になることもあります。

 そこで、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができるとされています(民法819条6項)。

 軽々しく親権者を変更すると、かえって子の生活の安定を損ないますので、実務上、親権者の変更が認められることは少ないものと思われますが、東京家裁平成26年2月12日審判は親権者の変更を認めましたので、参考のためご紹介します。

東京家裁平成26年2月12日審判の事案

〔事案の概要〕

①協議離婚の際、未成年者の親権者を母と定めた。

②母は未成年者と共に実家に転居したが、その実家は父宅と道路を挟んだ向かいに位置していた。

③母は自分の実家の家族と不仲になり、未成年者への監護意欲が希薄となったため、次第に実家の家族が未成年者の監護を担うようになっていった。

④母は転居したが、未成年者は母について行くことを拒み、実家に留まった。

⑤現在、未成年者は小学校5年生であり、母の実家で生活し、父との交流は存するが、母との交流はほぼ途絶えている。

⑥上記の状況で、父は親権者を自分に変更するよう求めた。

〔審判〕

 未成年者は、姉Fを中心とする母の家族による監護のもと、母の実家で生活しているところ、本件記録に照らしても、未成年者の監護状況に問題点は見当たらない。そして、家庭裁判所調査官による平成25年××月××日付け調査報告書(以下「本件報告書」という。)によると、未成年者の実際の監護を担う姉Fを中心とする母の親族と父との関係は良好であるのに対し、母の親族と母との関係は良好でないことが確認できる。

 しかも、本件報告書によれば、未成年者の母に対する印象・評価も良好でないことは否定し難い上、家庭裁判所調査官が未成年者に今後の生活等についての意向を尋ねたのに対しても、未成年者は、母と生活はしたくない旨及び現在の生活を続けたいし、また、将来的には、父宅に生活拠点を移転することになるであろうが、その場合にも母の実家と行き来したい旨を述べている(このような未成年者の意向も、同人の年齢〔数か月後には11歳に達する小学校5年生である。〕や本件報告書から確認できる未成年者の応答ぶり等からすると、十分な判断のもとでの意思の表明として尊重するのが相当である。)。

 してみると、本件離婚後、母の未成年者への関わりが変化し、しかも、母と未成年者が生活拠点を異にするなど、未成年者を巡る監護状況に変更が生じているため、その状況に応じて、未成年者の親権者を母から父へ変更する必要があると認められる。

※「相手方」を「母」、「申立人」を「父」と読み替えています。

コメント

 上記審判の事例のように、親権者の変更が認められるためには、子の利益に適うか否かが慎重に判断されることになります。

(弁護士 井上元)