外国人夫の氏にした妻が離婚により元の氏に戻す方法

日本人の女性が外国人の男性と結婚して夫の氏に変更した後、離婚により元の氏に戻す方法についてご説明します。

夫婦同氏の原則と離婚による復氏

夫婦は、婚姻の際に夫または妻の氏のどちらかを夫婦の氏として選択しなければなりません(民法750条)。多くの場合、夫の氏が選択され、例えば、夫・甲野太郎さんと、妻・乙川花子が婚姻すると、妻が甲野花子さんとなります。

そして、離婚した場合、婚姻によって氏を改めた妻は婚姻前の氏に戻ります(民法767条1項)。すなわち、甲野花子さんは、離婚により乙川花子さんに戻るわけです。ただし、離婚の日から3ヶ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます(同条2項)。

外国人と婚姻した場合の氏の変更

例えば、乙川花子さんが、外国人であるアンダーソンというファミリーネームの男性と結婚した場合、戸籍上、当然にはアンダーソン花子とはならず、アンダーソン花子とするためには、裁判所の許可を得てアンダーソンとする旨を届け出るか(戸籍法107条1項)、あるいは、婚姻の日から6ヶ月以内であれば裁判所の許可を得ないで届け出ることになります(同条2項)。外国人である夫は戸籍に入ることはありませんから、アンダーソン花子さんのアンダーソンは花子さん固有の氏です。

外国人と離婚した場合の3ヶ月以内の復氏

上記の例で、アンダーソン花子さんが離婚した場合、当然には、乙川花子さんに戻りません。しかし、離婚等により氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、離婚等の日から3箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができます(戸籍法107条3項)。すなわち、離婚から3ヶ月以内であれば、アンダーソン花子さんは、裁判所の許可を得ないで、乙川という氏に戻すことができるのです。

外国人と離婚した場合の3ヶ月以降の復氏

アンダーソン花子さんが、離婚から3ヶ月経過後に乙川に戻したい場合、原則に戻り、家庭裁判所の許可を得る必要があります(戸籍法107条1項)。

ただし、大阪家庭裁判所の取り扱いでは、次の場合には、例外はありますが、即時審判が行われるとのことであり、簡単な手続で許可を得ることができる可能性があります。

外国人と婚姻し、当該配偶者の通称氏に変更(戸籍法107条1項)した者が離婚をした後の婚姻前の氏への変更

ア 離婚の日から10年以内の申立てであること

イ 初回の離婚後、再婚等の氏の変動がない場合であること

外国人と婚姻し、当該配偶者の称する氏に変更(戸籍法107条2項)した者が離婚をした後の婚姻前の氏への変更

(離婚後3ヶ月以上経過した場合)

ア 離婚の日から10年以内の申立てであること

イ 初回の離婚後、再婚等の氏の変動がないこと

ウ 戸籍法107条3項による変更ができない場合であること

戸籍法

第107条

1項 やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

2項 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

3項 前項の規定によって氏を変更した者が離婚、婚姻の取消し又は配偶者の死亡の日以後にその氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、その日から3箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

4項 第1項の規定は、父又は母が外国人である者(戸籍の筆頭に記載した者又はその配偶者を除く。)でその氏をその父又は母の称している氏に変更しようとするものに準用する。

参考サイト

(弁護士 井上元)