交通事故による損害賠償金は離婚財産分与の対象となるか?

 婚姻期間中に夫が交通事故にあって損害賠償金を取得し、その後、夫婦が離婚した場合、その損害賠償金は財産分与の対象となるのでしょうか?

 この点、大阪高裁平成17年6月9日決定(家庭裁判月報58巻5号67頁)は、「財産分与の対象財産は、婚姻中に夫婦の協力により維持又は取得した財産であるところ、上記保険金のうち、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料に対応する部分は、事故により受傷し、入通院治療を受け、後遺障害が残存したことにより夫が被った精神的苦痛を慰謝するためのものであり、妻が上記取得に寄与したものではないから、夫の特有財産というべきである。これに対し、逸失利益に対応する部分は、後遺障害がなかったとしたら得られたはずの症状固定時以後の将来における労働による対価を算出して現在の額に引き直したものであり、上記稼働期間中、配偶者の寄与がある以上、財産分与の対象となると解するのが相当である。」と判示しました。

 そして、後遺障害による逸失利益部分について、上記判決は「症状固定時から、離婚調停が成立した日の前日である平成15年9月18日までの284日間の分につき財産分与の対象と認めるのが相当である。」としています。

 上記事案では、妻は財産分与として2600万円の支払を求めましたが、154万円しか認められませんでした。

(弁護士 井上元)