競馬による利益は財産分与の対象となるか?

 夫婦の婚姻中、夫が競馬による利益で購入した自宅の売却代金は離婚の際に財産分与の対象となるのでしょうか?

 この問題につき、奈良家庭裁判所平成13年7月24日審判(家庭裁判月報54巻3号85頁)は財産分与の対象となるとしましたが、妻に給付すべきは3分の1であるとしました。

「本件で財産分与の対象となる財産は本件物件(注:自宅不動産)のみである。夫は、本件物件は夫が自分の小遣いで購入した万馬券を換金して得られた資産が原資であるから、夫の特有財産として財産分与の対象にならないと主張するが、この万馬券は夫婦の婚姻中に購入されたものであるし、本件物件はもともと夫婦及び家族の居住用財産として購入され、現に12年もの間夫婦の生活の本拠として使用されてきたものであること、万馬券というのは射倖性の高い財産で必ずしも夫の固有の才覚だけで取得されたものともいえないこと、万馬券が夫の小遣いで購入されたものであるとしても、小遣いは生活費の一部として家計に含まれると考えることができること、これらの理由から本件物件を夫の特有財産とみるのは相当ではない。しかしながら、本件物件を夫の特有財産とみることはできないとしても、万馬券という射倖性の高い臨時の収入については夫の運によるところが大きいので、本件物件取得については夫の寄与が大きいことを認めるべきである。他方、本件物件での夫婦の共同生活が約12年に及んでおり、その間に妻が専業主婦として本件物件の維持、管理について一定の寄与をしたことも否定できない。また、前記・・・のとおり、妻は今後自分の生活のみならず長男の面倒も見なければならないのに、婚姻中ずっと夫の希望により専業主婦であったため、夫に比し収入を得る方法が限られていることは否定できず、現在もホームヘルパーとして稼働しているが、その収入は月額約15万円にとどまっていることを考えると、ある程度妻の生活扶助的な要素を考慮する必要もある。これらの事情、その他本件に現れた一切の事情を総合すれば、妻に対し本件物件の3分の1を分与するのが相当である。ところで、前記・・・のとおり、本件物件は、当事者双方の合意により売却され、現在約3478万円を夫が管理しているから、この3分の1である1160万円を妻に財産分与として給付すべきである。」

 上記裁判例は、競馬による利益が夫婦財産分与の対象となるか否かという特殊な事案ですが、夫婦共有財産と特有財産の問題、共有財産であるとしても分与される割合はどうなるのかという点で興味深い裁判例です。

(弁護士 井上元)