将来の退職金と離婚財産分与

離婚の際、夫が既に退職金を受け取っている場合には退職金が財産分与の対象となることは誰でもご存じでしょう。

しかし、夫は現在勤務中であり定年退職まで何年もある場合、将来の退職金も財産分与の対象となることについては知らない方も多いようです。

従来、夫が数年先に定年退職して退職金を受け取る予定である場合についても、現時点での退職金を評価し、直ちに一括して支払いを命じる裁判例が多かったようです。しかし、夫が懲戒解雇される場合には退職金は支給されませんし、社会情勢によっては退職金に関する制度自体に変更があるかもしれません。また、夫にとっては退職金を受け取る前に一括して支払う資金がない場合も多いでしょう。

このような状況で、大阪高等裁判所平成19年1月23日判決(判例タイムズ1272号217頁)は、離婚後5年以内に支給される見込みがある将来の退職金について、勤続年数30年、婚姻期間15年の場合における妻の寄与割合は2分の1であるから、財産分与の対象となるのは現時点における退職金の4分の1であるとし、「夫が退職金を支給されたときは、・・・円を支払え」との判決を下しています。

東京家庭裁判所平成22年6月23日審判(家庭裁判月報63巻2号159頁)も、夫の定年退職まで5年ある事案において同様の判断をしています。

このように、将来の退職金も原則として財産分与の対象となりますので忘れないようにしてください。

なお、調停は話し合いですので、一括支払いによる解決も多いようです。

(弁護士 井上元)