ハーグ条約が承認されました

平成25年5月22日の参議院本会議で、国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めるハーグ条約が承認されました。衆議院では既に承認されており、年度内にも条約加盟の見通しです。

外務省サイト「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」によりますと、ハーグ条約の概要は次のとおりです。

  1. 条約の適用対象
    (1)監護権の侵害を伴う、(2)16歳未満の子の、(3)国境を越えた移動
  2. 連れ去られ親は、中央当局*に対して、子の返還のための申請を行うことができる。
    (*:子が現在すると思われる国の中央当局に対して直接に、又はそれまで在住していた国その他の中央当局を通じて行う。)
  3. 子が現在する中央当局は、特に次のことのための全ての適当な措置をとる。
    1. 子の所在の発見(7条a)
    2. 子に対する更なる害の防止(7条b)
    3. 任意の返還又は当事者間での解決の促進(7条c)
    4. (司法上の)手続のための便宜の供与(7条f)
    5. 子の安全な返還の確保(7条h)
  4. 締約国は、次のような場合を除いて、返還命令を出す
    1. 連れ去りから一年以上経過し、子が新たな環境になじんでいる場合(12条)
    2. 申立人が監護権を現実に行使していなかった場合(13条1a)
    3. 申立人が事前の同意又は事後の黙認をしていた場合(13条1a)
    4. 子の返還が、身体的若しくは精神的な害を及ぼし、又は子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある場合(13条1b)
    5. 子が返還を拒否しており、当該子が意見を考慮するに十分な年齢・成熟度に達している場合(13条2)
    6. 要請を受けた国の人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められない場合(20条)
  5. その他の主な規定
    1. 締約国の司法当局は迅速な返還手続を行う。6週間以内に決定できない場合は遅延理由を明らかにする。(11条)
    2. 監護権に関する判断の禁止(現所在国の裁判所は、監護権の決定をしない)。(16条)
    3. 中央当局は、面会交流権の行使を確保するため適当な措置をとる。(21条)

    国際結婚で生まれた子供にとって、同じ国に住んでいる両親の離婚以上に、人生の大きな岐路に立たされることになります。何が子どもにとって一番よいのか、皆で考えなければなりません。

    (弁護士 井上元)