婚姻中に夫から妻に贈与された財産は財産分与の対象となるか?

 婚姻期間中に夫から妻に贈与された不動産は、夫婦が離婚する際、夫婦共有財産として財産分与の対象となるのでしょうか?

 大阪高裁平成23年2月14日決定(家庭裁判月報64巻1号80頁)は、元夫が元妻に対し、婚姻期間中に元妻に贈与した不動産は実質的な共有財産であるとして清算的財産分与として不動産の評価額の2分の1の金員の支払を求め、元妻は上記贈与は元夫の不貞行為の慰謝料の趣旨でなされたものであるから上記不動産は元妻の固有財産であって財産分与の対象とはならないと主張して争った事案において、「本件贈与は、妻が夫による不貞行為を疑い、現に夫による不貞行為を疑われてもやむを得ない状況が存在した中で、妻の不満を抑える目的でされたものであることからすると、婚姻継続中ではあるものの、確定的にその帰属を決めたもので、清算的要素をもち、そのような場合の当事者の意思は尊重すベきであるから、本件贈与により本件各不動産は妻の特有財産になったと認めるべきである。」とし、財産分与の対象とならないと判断しました。

 これに対し、原審の京都家裁平成22年8月31日審判(家庭裁判月報64巻1号84頁)は、婚姻期間20年を超える配偶者の贈与税免除の制度を利用する目的のみでなされたものとして、財産分与の対象となると判断されています。

 結局、当該事案において、贈与がどのような趣旨でなされたかがポイントとなりそうです。

(弁護士 井上元)