離婚協議中の生活費(婚姻費用)

 婚姻期間中、夫が生活費(婚姻費用)を支払ってくれない場合、妻は夫に対して生活費の支払を請求することができます。

 それでは、夫と妻が離婚を前提として協議をしている場合であっても生活費(婚姻費用)を請求できるのでしょうか?

 この点、東京高裁昭和58年11月19日決定(家庭裁判月報36巻11号133頁)は次のように述べています。
「夫と妻が、基本的には離婚することで意見が一致し、夫婦関係を調整することができない状態にあることは夫主張のとおりであるが、婚姻関係が破綻し、双方が離婚することに確定的に合意し、単に、離婚届出の手続をとらないために、長期間にわたって法律上の夫婦関係が形骸として残っているような場合であれば格別、本件のように離婚を前提とした協議の過程において、基本的には離婚することで双方の意見が一致しているものの、親権者の指定など、離婚に伴う事項について協議が調わず、結局離婚について確定的合意が成立したとみられない事態であるときは、婚姻費用分担義務者はその義務を免れることができないものというべきである。」

 婚姻関係破綻の原因が妻にある場合は別として、離婚協議中であっても婚姻費用を請求できますので、例えば、離婚調停を申し立てる場合、夫が生活費を支払っていないならば、あわせて婚姻費用分担調停申立を検討することをお勧めします。

(弁護士 井上元)