離婚財産分与の基準時

 離婚時の財産分与についてはどの時点を基準として決められるのでしょうか?

 この点、最高裁昭和34年2月19日判決(民集13巻2号174頁)が「民法771条によつて裁判上の離婚に準用される同法768条3項は当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、財産分与の額及び方法を定めると規定しているのであつて、右にいう一切の事情とは当該訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態の如きものも包含する趣旨と解するを相当とする」と判示しています(大阪高裁昭和49年8月5日判決(判タ313号265頁)も同旨)。

 ただし、「最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態の如きものも包含する」と言っているだけであって、必ずしもこの時点で判断しなければならないと言っているわけではありません。

 一般的には、(1)分与対象財産の確定をどの時点でするかということと(対象財産の基準時)と(2)そうやって確定した具体的財産をどの時点の価格を基準に評価するかということ(財産評価の基準時)とに分けて考えられています。

 そして、(1)については、清算的財産分与については夫婦の経済的協力関係は原則として別居によって終了することを理由として原則として別居時を基準とするの見解が有力です。ただし、別居後も夫の給与収入を妻が管理している、妻が子を一人で養育している、住宅ローンを一方のみが返済しているなど協力関係が続いているような場合には裁判時の資産も考慮されるとされています。

 (2)については、口頭弁論終結時とする見解が有力です。

(弁護士 井上元)